11. 思いがけない訪問者

ドラゴンの赤ちゃん、拾いました

赤ちゃんドラゴンはクローゼットの奥に寝かされていました。おばあちゃん曰(いわ)く、「弱った動物は静かで暗い所を好(この)む」のだそうです。
カゴに掛(か)けてある布をそっと取ってみると、気のせいか赤ちゃんドラゴンは一回(ひとまわ)り小さくなっているように見えました。皮膚(ひふ)もさらに皺(しわ)が寄(よ)って、黒ずんでいるように見えました。触(さわ)ってみると、体も冷たく、固(かた)くなっています。何の知識(ちしき)もないリューイにも、赤ちゃんドラゴンがかなり弱っていることがわかりました。
「おばあちゃん、この子は死にかけているの?」
リューイはそっとおばあちゃんに訊(たず)ねました。
「リューイ…」
おばあちゃんはリューイの肩に手をそっと置きました。
「残念だけど、このまま何も食べなかったら長くもたないでしょうね…」
おばあちゃんは昨日(さくじつ)、リューイが帰った後もなんとか赤ちゃんドラゴンを助けようと、いろいろと手を尽(つ)くしましたが、赤ちゃんドラゴンは何も受けつけませんでした。
「昔の人は、黄色い竜は金(きん)を食べるとか、赤い竜は火を食べるとか言ったけれど、この子は何を食べるのかしら。ねえ、リューイ?」
おばあちゃんは困(こま)ったようにリューイを見詰(みつ)めました。
「灰色だから…灰?」
おばあちゃんは無言(むごん)で肩をすくめました。
「そんなわけないよね。」
二人は揃(そろ)って溜息(ためいき)を吐(つ)きました。
「いったい、何を食べるんだろうね…」
二人の視線(しせん)の先では、赤ちゃんドラゴンが寒そうに体を丸めていました。

赤ちゃん竜(ドラゴン)はリューイが持ってきたお菓子も木の実もキノコも赤ちゃん竜(ドラゴン)は全部、食べませんでした。だけど、まだ何か試(ため)していないものがあるはず(はず)。この子はまだ赤ちゃんだから、赤ちゃんには…そうだ!おっぱい!赤ちゃんはおっぱいを飲むんだっけ!ベニーの赤ちゃんも弟のフューイも、赤ちゃんはみんなママのおっぱいを飲んでいました!
――ベニー!
そこまで考えて、リューイは初めてベニーがいないことに気が付きました。
「あっ!」
リューイは思わず大きな声を出しました。
「どうしたの、リューイ?」
おばあちゃんが心配そうに訊(たず)ねます。
「ベニーがいない!途中(とちゅう)まで一緒(いっしょ)にいたのに!」
「まあ、ベニーちゃんって誰(だれ)なの?」
おばあちゃんはベニーが人間だと思っているようです。
「猫だよ!この子にお乳(ちち)を飲ませようと思って連れて来たんだよ!」
「そうなの。リューイは優しいのね。」
おばあちゃんは、リューイの頭を優しく撫(な)でてくれました。
「でも、竜は卵生(らんせい)だからお乳(ちち)は飲まないんじゃないかしら。」
「らんせい?」
「そうよ。鳥のように卵から生まれる動物は、卵(らん)生動物(せいどうぶつ)というのよ。卵生動物はね、お乳を飲まないの。蛇(へび)やトカゲも卵生動物だから、お乳を飲まないわね。この子も卵から生まれたはず(はず)だから、きっとお乳を飲まないと思うわ。」
「卵生動物…」
リューイががっくりと肩(かた)を落(お)としました。

そのときです。コツコツと窓(まど)に何かが当たる音がしました。黄金(こがね)虫(むし)が窓にぶつかったときのような小さい音でした。
リューイが窓のほうに目をやると、そこには先ほどの妖精たちがいました。妖精たちは、一旦(いったん)はリューイから逃(に)げ出(だ)したものの、途中(とちゅう)で気になって引(ひ)き返(かえ)し、こっそりリューイのあとをつけてきたのでした。
二人は窓の外から赤ちゃん竜(ドラゴン)を見つけると、大声(おおごえ)でリューイを呼(よ)びましたが、リューイはまったく気付(きづ)きませんでした。そこで二人は何とかしてリューイに振(ふ)り返(かえ)ってもらおうと、先程(さきほど)から何度(なんど)も窓(まど)に体当(たいあ)たりをしていたのです。
何度も思い切り体当たりをして、二人の肩が痛(いた)くなってきた頃(ころ)、ようやくリューイが振り向きました。

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