4. 困った時はおばあちゃんに相談してみよう!

ドラゴンの赤ちゃん、拾いました

「変なの」
がっかりしたリューイの口から、そんな言葉が()れました。
ヘンテコな生き物はリューイの言葉の意味が分かったのか、ピクリと体を(ふる)わせました。
「へーんなの」
リューイはもう一回、言ってみました。
一体(いったい)全体(ぜんたい)、なんなのでしょう、コレは!一言(ひとこと)(あらわ)すのなら、「がっかりな生き物」です。期待(きたい)(はず)れもいいところです!
リューイは人差(ひとさ)(ゆび)で、ヘンテコな生き物の頭を(つつ)いてみました。
「ピギャー!ピギャー!ピギャー!」
カゴの中の生き物は、途端(とたん)に大きな声で鳴き始めました。
――やめてよ!やめて!こわいよ。
ぎこちない動作でカゴの中から逃げ出そうとするのですが、手も足も短くてカゴから出られません。
――ちょっと(さわ)っただけなのに、なんだよ、その声!ものすごい意地悪(いじわる)をしたみたいじゃないか!
少しムッとしたリューイは、今度は、ぽっこりと膨らんでいるお(なか)を押してみました。
――んっ?(やわ)らかい…
ヘンテコな生き物のお腹は、意外(いがい)にも子猫のように柔らかく、温かでした。リューイは少し(おどろ)きました。
リューイはもう一度、ヘンテコな生き物のお腹を押してみました。ヘンテコな生き物はリューイの指から(のが)れようと、懸命(けんめい)に体を動かしましたが、大きい頭を左右に()するだけで、少しも逃げ出せません。なんとも間抜(まぬ)けなその姿(すがた)に、リューイはとうとう笑い出しました。
「だいじょうぶだよ、何もしないって。おまえって、なんだか面白(おもしろ)いなぁ。」
リューイはヘンテコな生き物がまだ体も満足(まんぞく)に動かせない赤ちゃんであることに気付(きづ)くと、そっと抱き上げました。
――まだ目も開かないってことは、生まれたばかりなんだよね。
ヘンテコな生き物はしばらくの間、リューイの腕の中から逃げ出そうともがいていましたが、疲れたのか、そのうち大人(おとな)しくなりました。触れ合った部分から、ヘンテコな生き物の体温が伝わってきます。リューイがそっと頭を()でてあげると、気持ち良さそうに(まぶた)が下から上へと上がりました。もしかしたら、どこかの家で()われていたペットかもしれません。(ひと)()れしている様子です。
――あれ、なんだろ…可愛いかも。
リューイが腕の中のヘンテコな生き物を見ながら、そんなことを考えていると
――たすけて!
腕の中から小さな声が聞こえました。
「ええっ!しゃべった?!」
リューイは思わず(うで)の中の生き物を落としそうになりました。
たしかに、今、「たすけて」という声が聞こえました。リューイはまじまじとその奇妙な生き物を見つめました。十秒、二十秒、そして一分。リューイはじっと待っていましたが、いくら待っても(うで)の中のヘンテコな生き物が、再びしゃべることはありませんでした。
リューイはヘンテコな生き物を、目の高さにまで持ち上げてみました。体を左右に()すると、尻尾(しっぽ)もぶらぶらと左右に()れました。
ヘンテコな生き物は何をされても抵抗(ていこう)しませんでしたが、(こわ)がっているのか、親指の下の小さな心臓(しんぞう)はものすごい(はや)さで打っていました。
「だいじょうぶだよ、(こわ)くないよ。」
リューイがそっと()()めてあげると、ヘンテコな生き物はリューイの(むね)に顔をすり()せてました。
「なんだよぉ、可愛(かわい)いヤツめ!」
リューイは思わず笑顔になりました。

しかし、この子をどうしたらいいのでしょうか。この森を通る人は(ほとん)どありません。リューイが(ひろ)わなければ、この子はずっとこのままでしょう。寒そうに体を(ふる)わせているのも気になります。今は昼間なので森の中は幾分(いくぶん)、暖かいのですが、夜には気温もぐっと下がります。このまま森の中に置いておけば、死んでしまうかもしれません。
――せめて、モフモフの毛だけでも生えていたら良かったのに…
しかし、それは無理な注文というもの。
しかも、この子の命を(おびや)かすのは、寒さだけではありませんでした。この森には危険(きけん)肉食(にくしょく)(じゅう)が、うじゃうじゃ()んでいるのです。夜行性(やこうせい)の彼らは昼間はけして、人前(ひとまえ)姿(すがた)(あらわ)しませんが、夜になればここは彼らの天国です。
――でも…
お母さんの怒った顔が目に浮かびます。こんなヘンテコな生き物を家に連れて帰ったら、怒られるに決まってます。
「捨ててらっしゃい!」
何度、そう言われたでしょう。リューイが捨て猫や捨て犬を拾ってくる度、お母さんはそう言うのです。
「どうしよう…う~ん。」
リューイは(あご)に指を当てて考えました。
――いったい、どうしたら…
そのときです。急に素晴(すば)らしいアイデアが(ひらめ)きました。
「そうだ!おばあちゃんにお願いしてみよう!」
なんでもっと早く考えつかなかったのでしょうか。おばあちゃんの家で()ってもらえば、何の問題もありません。いつでも好きな時にこの子に会いに行けます。
――それに、おばあちゃんは一人暮(ひとりぐ)らしだから、ペットがいたら(さび)しくないはず…この子も住むお家ができるし、おばあちゃんも寂しくなくなって、一石(いっせき)二鳥(にちょう)だよね。僕って天才!
自分の思いつきに(うれ)しくなったリューイは、ヘンテコな生き物をカゴに戻すと、白い布を掛け、それを抱えたままおばあちゃんの家へと走り出しました。

「ハクション!」
まご勝手かってなアイデアなど知らないおばあちゃんは、その頃、小さな三角屋根のお家の中でくしゃみをしていました。
――あら、やだ!誰かが(うわさ)をしているのかしら?

おばあちゃんは編み物の手を止めると、ゆっくり伸びをしました。今日も良い天気です。窓から庭の花々を眺めながら、おばあちゃんは満足そうな笑みを浮かべました。気楽な一人暮らしを満喫(まんきつ)しているおばあちゃんは、この後、一気(いっき)(さわ)がしくなるなんて思いもよりませんでした。

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