リューイとおばあちゃんは赤ちゃんドラゴンに食事を摂らせようと色々と手を尽くしましたが、赤ちゃんドラゴンは何も食べようとはしませんでした。
そうしているうちに、赤ちゃんドラゴンの体はどんどん冷たくなってきました。
けれども、二人ともドラゴンなど飼ったことがないので、どうすればいいのかわかりません。なす術もなく、赤ちゃんドラゴンを見守るしかありませんでした。

実は先程から、おばあちゃんの脳裏には子供の頃の記憶が何度も蘇っていました。そんな事があったことすら忘れていたのに、この子を見ているうちに急に思い出したのです。
それはおばあちゃんが森ではなく、まだ町に住んでいた子供の頃の話です。ある日、近所の人が奇妙な動物の死骸を拾ってきました。
その死骸はカラカラに干からびていましたが、ちょうどこの赤ちゃんドラゴンぐらいの大きさでした。死骸には翼と尻尾のようなものが付いていましたが、何分にも干からび過ぎていて、元の形がわかりませんでした。
人々は口々に、「これは奇形の鳥だ」とか、「いやいや、これは突然変異のトカゲだ」とか、果ては「未確認動物」などと勝手な事を言っていました。
そんな中、ある人がぼそっと呟いた一言におばあちゃんは強い衝撃を受けました。
「時空を超えて、迷い込んできたドラゴンなんじゃないか?」
しかし、その言葉は皆に軽くスルーされました。なぜなら、その人は日頃から少し変わった言動をする人だったからです。
しかし、子供だったおばあちゃんはその言葉に確信を持ちました。
――この人の言っている事は本当かもしれない…
一方で、子供心にも大胆な事を言う人だなとも思いました。だって、そんな事を言ったら益々、変な人だと思われてしまうからです。
まだ、世の中が大らかだった頃の話です。その人はその後も少し変わった言動を続けていたが、社会から爪弾きにされることはありませんでした。
最終的に、その死骸は近くの大学が研究のために引き取り、その後、どうなったかは誰にも分かりません。
おばあちゃんがこの子をドラゴンだと思ったのも、そういった経緯があったからでした。
――これは間違いなくドラゴンだわ。
その思いは刻一刻と強くなっていきました。
――本来であれば、ここにいてはいけない生き物…
だとしたら、この子もあの死骸と同じ運命と辿ってしまうのでしょうか。「可哀想」にとおばあちゃんは呟きました。
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